羽生さんはしばらく私を見つめていたが、諦めたように大きく溜め息をついた。 そして取調室を出て、メモを持ってすぐに戻ってきた。 「仕方ない。ほら」 そう言って、私にそのメモをくれた。 渡されたメモを見るとそこには、あの脇道にほど近い、喫茶店の名前が書いてあった。 「そこでバイトしてる。 ……行って会っても、何もいいことはないぞ」 メモを持って立ち上がった私に、羽生さんは気がかりそうに最後にそう付け加えた。 私は笑顔で会釈し、お礼を言ってその場を後にした。