言葉が出てこない私は、やっとの思いで首を振った。 「じゃあ、確かめれば?」 確かめる……? 「月に直接、確かめればいい」 そう言って立ち上がり、マスターは店の入り口を開けた。 「ほら、入って」 マスターに促されて入ってきたのは、 「月……」 申し訳なさそうに、所在なさそうに、でも何かを決心した素振りで月が入ってきた。 月の左の頬が赤い。