月がどこかへ行ってから、少しだけ伸びた髪を触る癖がついた。 病院で月が触れた箇所に、つい触れてしまう。 そろそろウザったくなってきたけれど、月が戻って来るまでは何となく切りたくなかった。 私は今日も『セレネ』へ行き、買い出しへ行ったマスターの代わりに店番をしていた。 カランカラン♪ 「いらっしゃいませッ」 勢い良く挨拶し、私はお客の元へ向かった。 薄暗い店内では、お客の顔が逆光でよく見えない。 それでも、青っぽい瞳が私を見ているのがはっきりとわかった。