月は、あの数日後に忽然と姿を消した。 病室のベッドの上にただ一言 『行ってくる』 という小さなメモ書きを置いて。 治療はまだ途中だったし、羽生さんもマスターも心配していたが、私は月を信じていた。 事件で芽吹いた、憎しみの連鎖。 そのあとに訪れた、新たなる恨み。 全てを乗り越えて、きっと帰ってくる。 マスターのいる『セレネ』に。 私の隣に。 きっと。