「ごめんね、遅くなって」 マスターも月を仰ぎ見ながらそう言った。 「そんな……私の方こそ……」 私が言葉を続けようとしたときに、マスターは私を見て言った。 「明日香ちゃん」 どちらともなく立ち止まる。 マスターは少し悲しそうな顔で言った。 「実はさっき、警察に行って来たんだ」 不意に風が私とマスターの間を駆け抜けていった。