「明日香ちゃん?」 不意に声を掛けられ、私はビクッと立ち止まった。 「こんなところでどうしたの?」 マスターが不思議そうに私を見る。 それもそう。 私はマスターに月の付き添いを頼まれたにも関わらず、病室を出て来てしまったのだから。 責められてもおかしくないこの状況で、マスターは言った。 「どうしたの? どこか痛むの?」 「……ちがっ……」 私の涙を見て、マスターはキズが痛いと思ったのか、そう言った。