十年という月日が長かったのか、それとも短かったのかは分からない。

ただ、僕には幾ばくかの時間が必要だったのだ。

「彼女」が果たして誰なのか、早紀は生きているのか、そもそもこれは現実なのか、それとも夢なのか……


「行こうか」と僕は言った。

「ええ」とシロナは答えた。

そして僕たちは手を繋ぎ、朝焼けの街を背に歩き出した。



2008年夏

僕は、十年前の僕を探す旅に出た。