そう言って達郎兄ちゃんも頭からタイ焼きにかぶりついた。

やられたチクショウ。
でもタイ焼きおいしーから許す。

「歩きながら食うか」
あたしはアンコの甘い余韻に浸りながら、それに従った。

「達郎兄ちゃんっていつもスーツ着てるんだね」

今日も黒のスーツ姿なのに気付いた。

「婆ちゃんが服装にうるさくてな」

「麻砂お婆ちゃんが?」

あたしと達郎兄ちゃんは母親同士が姉妹という間柄で、麻砂お婆ちゃんは母方の祖母にあたる人である。

達郎兄ちゃんは実家住まいだから、お婆ちゃんとは毎日顔を合わせているはずだ。

「父さんや兄さんの立場を考えて、ちゃんとした服装をしなさいというのが婆ちゃんの口癖だ」

「お婆ちゃんてそんなに厳しかったっけ」

「カホは年に数回ぐらいしか会わないからな」

確かに。今年は正月に会ったきりだ。

「それに家には女の孫がいないから、婆ちゃんはレミやカホなんかには甘いんだ」

「そうなの?」