車椅子はゆっくりと私の前までやって来た。
静かな空気が流れている。
「長い間、寂しい思いをさせてしまったようだね。これからは、ずっと私の側に居ておくれ。」
温かいものが、私の手を包み込んだ。
お祖父さまの手が、優しく私の手を握った。
不思議なくらい、嫌じゃない。
シワシワの手は愛しそうに、私の手を擦る。
うっすらと涙を浮かべたその目に、心がえぐられる思いがした。
「お祖父さま…お会いできて嬉しいです。」
その手を握り返していた。
誰かがすすり泣いているようだった。
自分でも予想出来なかった。
なんて声を掛けたらいいか、どのタイミングで『お祖父さま』と言えばいいか自問自答していたのに。
自然にその一言が言えた自分を、想像さえ出来なかった。
誰もが喜んでいるだろう、この光景の中私は感じた。
もう、引き返せない。
ワタシハ、イツワリノ、オジョウサマ。

