「私は執事、でございます。『さん』付けは少々困ります。」
は?
『さん』付けしないで呼ぶ?
ねぇ竹下、とか?
口に出さずに、心の中で言ってみた。
「無理!無理です!」
思わず体を前に出してしまったので、シートから落ちそうになった。
「大丈夫ですか?夢叶様。」
あ~恥かしい。
絶対竹下さん、大爆笑だよ、心の中は…。
「それでは名前でお呼び下さい。」
「名前…って?」
なんて言うんだったかな?
「健斗(けんと)でございます。」
一瞬、子供のように見えた。
「健斗……………………さん…。」
口許が大きく緩み、頭を掻く。
「それで結構です。段々と慣れていきましょう。」
「はい…。」
お祖父さま、伯父さま、伯母さま、健斗さん。
私は呪文のように繰り返した。

