時間だ。
あの方がいらっしゃる。
「では、こちらへ。」
ヒールは慣れていらっしゃらないのか、ぎこちない歩き方で足を進める。
そして入口の扉の前で、足を止める。
と、同時に勢いよく扉が開かれた。
「お待ちしておりました。」
腰を深く折った。
「やぁ竹下、ご苦労だったね。」
その方は私(わたくし)に軽く声を掛け、夢叶様の前へ進んだ。
「君が夢叶さんだね。初めまして、私が御園泰明(みそのひろあき)だよ。」
この方は、夢叶様に養子縁組の話を持ち出された、御園グループの取締役・泰明様。
まだ48歳。
面長の顔に金縁の眼鏡。
清潔感の漂うスーツは、一国の主のように存在感を主張する。
「初めまして…。」
緊張しているのか、夢叶様は震えているようだった。

