長い間私は包まれていた。 健斗さんの胸に――。 「もう泣かないで。」 紛れもなく、健斗さんの声。 耳に当たったその胸から、トクトクと鼓動が聞こえた。 あまりにも突然のことに私は、何の反応も出来ない。 その手はゆっくりと私の髪を撫でる。 鼓動は健斗さんと合わせるように、速さを増した。