そこにはまだお祖父さまの匂いがした。 読みかけの栞がはさまったままの本も、いつも飲んでいたお薬も、車椅子の背もたれに掛けられているガウンも。 まるでちょっと部屋にいないだけみたい。 お祖父さまだけが、この部屋に足りないだけだった。 「やぁ夢叶。」 窓辺に立っていた伯父様は、私に声を掛ける。 「少しはおちついたかい?」 変らない、穏やかな口調。 お祖父さまが亡くなって、私のことを心配してくれている。