竹下さんはエレベーターのボタンを押し、先に私を中へ入れた。
訳の分からないまま、乗り込んだ。
この場に似合わない自分が、恥かしかった。
鏡のように磨かれたエレベーターの扉に映る自分の姿。
腰までの髪を後ろでひとつにまとめただけ。
パーカーにジーンズ姿。
悲しいほどに、惨めになった。
「夢叶様。」
扉の前に立っていた竹下さんは振り返って、私を見つめた。
ドキドキした。
よく見ると、整った顔立ち。
ふんわりとした黒髪にすっと通った鼻筋。
その大きな瞳が私を離さない。
「もう一度、自己紹介を致します。私、竹下健斗です。」
深く頭を下げる。
その動作が流れるようで美しいと思える程だ。
「夢叶様の執事をおおせつかりました。いつもお側でお世話をさせて頂きます。」
し・つ・じ?
そしてまるで私の心を察したように、優しい微笑をみせた。
「はい、よろしくお願いします…。で、しつじとは…?」
ふふっ、と竹下さんの口許が緩んだ。

