長閑【短編集】


すると、いつの間にか息子は俺のつい隣でスイカを食っている。

「‥あのさ、」

「何だよ?」

「ごめんな。あんま孝行してやれなくて。」

「ぶっ」

今度は俺がむせる番だった。

「何言ってんだ。どっかで頭でも打ったか?」

「酷いな俺わりと真剣なんだけど。」

息子はそう言ってむくれた。

こっちの顔の方がこいつらしいと思った。

「孝行なんていらなねぇからさ。」

俺はスイカをかじってから言った。


「…お盆休み以外にも帰ってこい。」

息子は少し驚いた顔をしてから返事を返そうと口を開けた。

それと同時に涼しい風が吹き抜ける。


―‥チリンチリンチリン


いつも涼しくさせる風鈴がやけに音をたててうるさくしたために、俺は息子の呟くような声を聞きそびれた。

「何か言ったか?」

「いや、何も。」

俺は100均で買った風鈴を睨んだ。


風鈴はそんな俺をせせら笑うように、

綺麗な音をたてて風と共に揺れるのだった。




風鈴 end.