背を向けたまま立ち止まり。 振り返る勇気を溜めているあたしに、奏汰は言葉を続けた。 「一目惚れって、あると思う?」 緊張した様子もなく、さらりと流れるように言った奏汰の一言。 あたしは背を向けたまま、奏汰に言葉を返した。 「――あると思うよ。あたしも、経験あるから」 「……だよな。じゃあ俺は、一目惚れしたってやつか」 「そうなんだ。それなら、その子にさっさと告っちゃえば?」 呑気に自分の恋を一目惚れだと言う奏汰に。 イライラしてしまって、あたしは冷たく、そして素っ気無く言い放った。