「はぁー……」
携帯の時計を見ると、もう一時間近くもここで待っている。
六月の梅雨時にしては珍しく晴れた空。
もしも今日、雨が降っていたら、あたしはこんなに根気強く待っていたのかな。
「……あ、おまえ、なにやってんだよ」
空を仰いでいると、不意に声をかけられる。
振り返るとそこには、出会ったときと同じように、【来来軒】のエプロンを片手に持った奏汰がいた。
「奏汰……」
「おいおい、呼び捨てにすんなよ。俺はおまえより年上だぞ?」
イタズラっぽく笑う奏汰。
あたしの胸の鼓動は、治まりがつかないくらいに飛び跳ねる。


