「……ううん、なんでもない」
まだ自分の気持ちがどうなのか分からないのに。
『ダメだよ。あたしだって奏汰のこと好きなんだから』
あたし、そんなことを言おうとしていたんだ。
奏汰に彼女がいるのかどうか、早く知りたい。
真菜の必死な頼みを聞いて、あたしはひとり、【来来軒】の前に残った。
店を囲むようにして置かれた、腰を下ろすのにちょうどいい高さの石畳。
そこに座ると、奏汰が出てくるまでの暇つぶしに携帯のゲームをしながら待った。
「あー、またゲームオーバー」
携帯の小さな画面で繰り広げられる、シューティングゲーム。
何度目かのゲームオーバーになると、さすがのあたしも飽きてきた。


