「おばちゃん、来たよ」



あたしもおばちゃんにそう返す。

でもあたしの視線は、おばちゃんを通り越して、右に左にと泳いでいた。


探している相手。

さっき店の前で会った、大将の親戚だって言っていた奏汰。

奏汰を見つけたからと言って、なにか話をするわけでもないのに、あたしの瞳は勝手に奏汰を探し続ける。



「柚ちゃん、なに食べる?」


「あぁ……。ラーメンとチャーハン」


「了解。お友達は?」


「あたし、ラーメン」



注文を取り終えたおばちゃんが、厨房に向かって大きな声でオーダーする。

奥からはそれに対して何の返答もない。