「柚! 行くわよ!」 「お母さん……っ。かんなさんの話を聞いてよっ!」 懇願するあたしと、かんなさんの言葉なんて、お母さんの耳には届かない。 「お母さん……。柚を連れて行かないでください!」 部屋の入り口に立っていた奏汰が、強い眼差しでお母さんを見据え、はっきりと言い放つ。 でも、それさえもお母さんの心には届かず。 お母さんは、一刻も早く、あたしをこの場から連れ去ることしか頭にない。 「あたし……っ、帰らない!」 「柚……っ!」