「あっ、ねぇ、柚!」
「えっ?」
玄関のドアを閉めようとしたとき、お母さんが呼び止めた。
「槙村先生って確か、生徒指導だったわよね?」
「うん、そうだけど?」
「生徒指導の先生って、補習のことにまで関わっているの?」
お母さんの、そんな素朴な疑問に、あたしの心臓がドクンと鈍い音を立てる。
落としそうになってしまったバッグを、しっかりと両手で持ち直しながら、あたしは精一杯の演技をする。
「生徒指導なんだから、補習のことにも口を出すのよ。ホント、嫌になるよ」
「そう……。昔と今じゃ違うのね。お母さん、担当教科の先生とか担任の先生が口出しするものと思っていたから」


