槙村先生からの頼まれごと。
お父さんが部屋を出て行き、廊下を歩く足音が完全に聞こえなくなったのを確認したあたしは、急いで柚羽ちゃんの実家の住所をメモした。
メモをしながら思うのは、高校時代のお母さんと柚羽ちゃんのこと。
あたしが知らなかった、お母さんの過去。
――……柚羽ちゃん……。
柚羽ちゃんは、お母さんと同じようにかんなさんを恨んでいるのかな。
お母さんがかんなさんを憎み続けていること、柚羽ちゃんはどう思っているのかな。
あたしが知っている写真のなかの柚羽ちゃんは、どれも優しい表情をしている。
誰かを憎むとか、そういうドロドロとした感情を持たない人のようにも思える。
けれど、お母さんにとって。
かんなさんを『許す』ということは、いったいどれだけの勇気を要するんだろう。