お母さんは、あたしが奏汰と接していないことを察すると機嫌がいい。
携帯電話の利用料も、奏汰と付き合う前に戻った。
休みの日は、ずっと家にいることにした。
学校帰りに立ち寄る【来来軒】だけが、あたしと奏汰が一緒にいられる僅かな時間。
「ただいまー」
「あっ、お父さん。お帰り」
程なくして、お父さんが帰ってくる。
お母さんの機嫌がいいと、お父さんの笑顔も穏やかで、張り詰めた空気なんか、ちっとも感じないんだ。
お父さんは笑顔をキープしたまま、着替えるために寝室へと向かう。
あたしは、お皿にシチューを注ぐお母さんを気にしながら、お父さんの後を静かに追いかけた。
「……お父さん。ちょっといい?」
閉め切られたドア越しに、囁くようにして声をかける。


