「昔のことを、おまえたちに分かってもらいたかったからだよ」 奏汰と大将の会話に耳を傾けながら、あたしの目は、先生の視線を追う。 「……先生? どうしたの?」 「えっ? いや、なんでもないよ」 先生が慌てて視線を外した瞬間、聞こえたような気がしたんだ。 『――柚ちゃん……』 女の人の、優しい声と。 『きっと、大丈夫だよ』 男の人の、落ち着いた静かな声。