「柚ちゃん、奏汰」
永輝さんの携帯に表示されたメッセージを眺めているあたしたちに、大将が静かな口調で話し始める。
「永輝くんと柚羽さんの叶えられなかった思いを、二人で実らせてくれないか?」
奏汰の視線が大将から外れて、永輝さんが命を落としたというカーブの一角に移る。
どんな思いで、あの場所から落ちていったんだろう。
きっと最後に思ったのは、
会いたくて、そばにいたくて、守りたかった、最愛の『彼女』のこと――。
それは柚羽ちゃんもきっと同じだったに違いない。
「……こんなこと言ったら、逆に重荷かな」
なにも返さないあたしたちに、大将は苦笑した。


