「携帯?」 顔をしかめて訊く奏汰に、大将は何も返さず携帯を指で操作し始めた。 やがて、無表情で携帯を操作していた大将の顔に、ほんの少しだけ穏やかな表情が戻る。 「これは、永輝くんからのメッセージだよ」 大将に見せられた携帯の画面。 一番上には『未送信』と表示されている。 【この先なにかあったとしても、誰も責めず、すべてを許してほしい】 メールの本文は、誰に送ろうとしていたのかは分からない。 日付は、西暦こそ出ていなかったけれど、六月十二日となっていた。