「――……ったく。おまえが車出すべきだろうが」 「俺、スポーツカーですから。四人乗ったら重くなります」 運転席の大将と、助手席の槙村先生。 二人は目的なんか一切教えてくれなくて、仲のいい痴話喧嘩をさっきから繰り広げている。 「……どこに行くの?」 「さあ……」 後部座席に座るあたしと奏汰は、二人の漫才のような喧嘩を見ながら、しきりに首を傾げていた。 奏汰に会うのは何日ぶりだろう。 あたしの家に来たあの日以来……。 そう経ってはいないのに、何年も会っていないような気がする。