あたしはこんな奏汰、知らないよ。 戸惑ってしまって、あたしは言葉をうしなう。 「用がないんなら、俺、行くから」 店の引き戸に手をかけ、奏汰は素っ気無く立ち去っていこうとする。 「奏汰……っ!」 奏汰を引き止める言葉も浮かばなくて。 あたしは自分の感情そのままに、奏汰の大きな背中に抱きついた。 「……なに?」 奏汰の冷たい口調。 けれど、奏汰の背中はそれに反して、泣きたくなるくらいに温かい。