そういえば……。 奏汰とはじめて出会ったのも、ここだったな。 好きだと言われたのも、やっぱり【来来軒】の前。 あたしと奏汰にとって、大切な場所……――。 「……柚?」 「――奏汰……」 どれだけの時間、奏汰を待っていたんだろう。 奏汰は困惑したような顔で、あたしの前に現れた。 「なに?」 冷たく訊く奏汰。 以前みたいに、あたしを見て笑うこともない。