顔を上げて諒子さんを見ると、彼女の頬にひとすじの涙がつたっていた。 俺の視線に気づいた諒子さんは、こぼれ落ちた涙を素早く拭う。 「……帰って。私たちのことは、もう放っておいて」 うなだれる諒子さんを見て、俺は静かに言った。 「――また来ます」 本当ならそっとしてあげたい。 だけど……。 柚ちゃんと奏汰。 かんなのことを思うと、引くに引けなかった。 諒子さんはかんなを許すことなんて、おそらくできないだろう。 そのことは、俺もかんなも十分すぎるくらいに分かっている。