――槙村 晶。


俺がまだこの店で、「大将」ではなく「坊主」と呼ばれていた頃。


突然、俺を訪ねて来たクソ真面目な高校生。

それが晶だった。


永輝くんと柚羽さんの一件で知り合った晶とは、もうかれこれ二十年来の付き合いになる。



「村岡、すごく落ち込んでいて……。奏汰くんは……どうですか?」



柚ちゃんと別れたことや、なぜ別れることになったのか。

奏汰から話は聞いていた。



「奏汰は……いつもと変わりないよ」


「……そうですか」



別れたあとも、奏汰は落ち込んだ様子も見せない。

いつも、笑っている。