私が結崎さんに最後に会ったのは、結崎さんが死ぬ二ヶ月前だった。 『……怒ってる?』 二股をかけていると決め付けていた私は、結崎さんに笑顔ひとつ見せなかった。 結崎さんは苦笑しながら、いつも買うコーヒーをレジカウンターに置いた。 『別に、怒っていませんけど?』 『……柚羽、元気にしてる?』 『……えっ……』 いつも柚羽のことを『柚羽ちゃん』と呼んでいた結崎さん。 愛しそうに呼び捨てで柚羽の名を口にした結崎さんに、思わず、会計をしていた手が止まった。 『元気……ですよ』 『そっか』