「俺とお母さん、どっちが大事?」 そんな残酷な選択を柚に迫る。 大切な親友を失った柚のお母さん。 忘れたくても、忘れることのできない過去。 その一因が、俺という存在によって鮮明に蘇る。 大切な娘が俺と出会って。 お母さんは俺を見るたびに、昔のことを思い出すに違いない。 「……なんで、そんなこと言うの? 奏汰は……」 俺は、柚の顔を包み込んだままだった両手を、静かにそっと離した。 「俺は、柚の家庭を壊したくないよ――」 「奏汰……っ」