『オバサンたち、うるせぇよ』 俺は嫌気がさして、わざと大きな声でそう言い放ったのを覚えている。 それから俺は、あの息苦しい場から遼ちゃんを連れ出したんだ。 どんよりとした曇り空が広がる梅雨の時期。 沈黙を貫いていた遼ちゃんに、俺は訊いた。 『遼ちゃんの奥さん……、どうかしたの?』 遼ちゃんはネクタイを緩め、口を開いた。 『……おまえにも話しておくべきかな』 『えっ……?』 はじめて見る、遼ちゃんの悲しげな表情。