「遼太郎くん……」 「大将?」 大将を『遼太郎くん』と呼ぶお母さん。 大将もまた、お母さんのことを『諒子さん』と呼んでいた。 「遼太郎くんの奥さんはね、柚羽を死に追いやった人なのよ」 「……うそ……」 「柚羽だけじゃない。柚羽の大切な人も、あの人のせいで……」 柚羽ちゃんの、大切な人……――。 そう思ったあたしの口からは、自然と永輝さんの名前が零れていた。