走り去る車を咄嗟に追いかけようとしたお母さん。 そんなお母さんのただならぬ様子に、あたしの胸に不安が広がった。 「お母さん……?」 肩を大きく落とすお母さんの背中に向かって呼びかける。 「……柚、家に入りなさい」 お母さんはあたしに背を向けたまま、低い声で冷たく言い放った。 言われるがままに家の中に入ると、それを追うようにしてお母さんが戻ってきた。 「お母さん、どうしたの?」 あたしの問いに、お母さんは何も答えず、無言のままキッチンに向かった。