――はじめて知る奏汰の家庭環境。


だけど、複雑なのはそれだけじゃなかったんだ。



「これはあたしの弟、永輝だよ」


「永輝……さん」


「奏汰が生まれる前に事故で死んじまったけどな」



お母さんはソファから立ち上がって、遺影の前に手向けられている花を整える。

あたしも続くようにして、遺影の前に立った。



よく見ると、テーブルの上には遺品と思われるものが置いてある。

アクセサリー、ジッポ、サングラス……。


遺影のなかで静かに微笑んでいる、永輝さん……。