奏汰よりも、あたしの方が緊張してきたよ。 奏汰って、意外と怖いものしらずなのかな。 お風呂に入っていたお父さんみたいに、鼻歌なんかうたっちゃって。 心の準備ができないうちに、奏汰が運転する車はあたしの家に着いた。 「ほら、行くぞ」 「う、うん」 家の前。 この家に住んでいるあたしを後に残して、奏汰はすぐに玄関のチャイムを押した。 「はーい」 ドアの向こうから聞こえる、さっき別れたばかりのお母さんの声。 奏汰の後ろにいたあたしは、それを聞いて、奏汰の前に歩み出た。