「見付かったらこれを……」


セイルの手の中には血に塗れた指輪が。あの場所で拾った物であろう。

セリルは2つの事を思い浮かべていた。

1つは受け取ればセイルが本当に死んでしまうかもしれないと言う事。

受け取ったら生きる事を諦める。

もう1つは受け取らなかったら、セイルは死ぬ事はないかもしれないと言う事。

受け取らなかったらしぶとく生きてくれる。

つまりこの選択はある意味では、セイルを“生かす”か“殺す”かの選択。

セリルは少し悩んだ上で、セイルのその願いを拒んだ。


「それは、ルシェさんが戻って来たら兄さんが渡しなよ。俺が渡すべきじゃない」


死ぬならルシェに指輪を渡してからにしてほしい。少しでも生きて欲しい。

そのままセリルは振り返る事なく走り去った。