フィアー一族は世界に彼ら以外にも多く存在する。

イレイスはその全てを掌握は出来ていない。

2人の情報を流されたとしても、同じような容姿、名前の人間は多くいる。

また、伝達の過程でその情報が偽りの物になる場合も。やや不完全な情報網。

彼らが情報を得る手段は主に手紙だけだったのだ。

その為か容姿で素性を知られると言う事はほとんどなかった。


「居住申請かい? 嬉しいねえ。ようこそ我が町へ」


役所で出迎えてくれたのは40代半ばであろう赤毛の女性。

気さくなその態度に2人は安心した。

明らかに“イレイスです”と言わんばかりの人間が出てきては困る。


「それじゃあ、この書類に必要な事を書きな」


渡された書類に名前を書く2人。勿論それは偽名。2人が心を痛める理由である。