それから半月くらいして、由依の誕生日がやってきた。
朝起きてすぐ、カーテンを開けて外を見た。この日は毎年晴れると決まっているのだ。今日は信じられないくらいいい天気。
曇がひとつもない。
まるで神様まで由依の誕生日をお祝いしてくれているみたいだ。
窓を開けると、ひやりとした朝の空気が部屋に入ってきた。
頭がはっきりしてくる。


いけない、急がないと。
支度して玄関に走る。間に合った。
鍵を開けて入ってきた衣央さんは、由依がいたことにかなり驚いている。
でもその顔はすぐに笑顔に変わった。

誕生日おめでとう。

おはようの代わりに言われると、ちょっと照れくさい。
でも朝一番に聞いた言葉が「おめでとう」だなんて素敵。
こんな時だけ待ち伏せするのはずるいけど、早く誰かに会いたかったんだもの。
今日はみんなにうんとお祝いしてもらうんだから。

ありがとう。

衣央さんの手をとって居間をぬけ、台所へ向かった。
料理を始める準備をしている姿はまほう使いみたいだ。
何ができるのか、見ていてわくわくする。

さあ、何が食べたいかおっしゃい。
作ってあげるから。

ホットケーキをたのんで、由依はカウンターのいすに座った。観察にうってつけの特等席だ。