ブルーのベルベットの小箱


これって・・・



高瀬が戻って来た。



「あっ、これ・・忘れ物。」


高瀬はそれを受け取るとポケットにしまい込み・・・


「彼女に渡そうと思って・・・

いつもチャンスをうかがって持って歩いてるんだ。」


そう言って・・・



またクルリと背を向け出て行ってしまった。


私もあとを追う。


店を出て高瀬はどんどん先に歩いて行く・・・



「待ってよ!」


やっと高瀬に追いついた。


「本とに帰るの?」


「ああ。」




このまま帰るのは・・・やだ・・・



「どうせならもう一軒行こー!」


「おい・・・」


その気のない高瀬を無理やり引っぱて次の店にと向かった。




『彼女に渡そうと思って・・・』


あの小箱・・・


やっぱり・・・



涙が込み上げてきた。



今さらどうしていいかなんて・・・


分からない・・・