ってか、一琉って今何か持ってたっけ…?

鞄すら持ってないのに何をくれるって…



「前からお前が欲しがってたもんだ、受け取れ」

「へっ?」



急に片手でグッと頭の後ろをつかまれて、引き寄せられる。

それと同時に、唇に柔らかいものが押しあてられた。

慌てて目を開けると、すぐ目の前に一琉の顔があった。

ゆっくりと、唇が離れる。



「………え?」



これはもしや…キス?

え、"いーもん"ってキスのこと!?


なんていうか…
今の私は放心状態で…

とりあえず、何か言わなきゃ…

えーと…



「……ごちそうさまです…?」

「ぶはっ、バカかお前!!」



一琉はお腹をおさえて笑いながら机をバンバンと叩いた。



「なっ、なにさ…っ!」

「な?いーもんだったろ?」



そして今度はニヤニヤと笑う。



「うっ、自惚れんなぁあ!!!」



私は大声で叫んだ。


その日、一琉の自転車が白と黒のスプレーでゼブラ柄に塗装されるという地味な嫌がらせが発生した。

犯人は紛れもなく…



「おいブス出てこいてめぇー!!」



この私。