見るに堪えれず、私は叫んでいた。



「いや、やめろよ!つか、抵抗しろよ!バカ!バーカ、バーカ!おら、右フック出してけって!ガードが甘いんだよ!ガード下げんな!ほら、打たれた!」



それでも、そいつは抵抗しない。



「あかりさん……オレは、オレは!」



「私がお前に何してあげたって言うんだよ!」



「……あかりさんは、こんな不良なオレにも優しくしてくれた。社会に、世間に、見放されたオレに!唯一、向き合ってくれた!………だから、オレはっ!!」



大勢の不良に殴られながら、冬馬は叫ぶ。



「あんただけには、幸せになってもらいたいんだ!!」



「…………っ」



何も、言えなかった。


残念ながら、


あなたの言葉は、

あなたの想いは、


『あかりさん』には届かない。



私は、『あかり』ではない。


ただの、夏月なのだ。





いつの間にか、私の両目からは涙が溢れていた。



私じゃない、他の人への想い。



真っすぐで、純粋な。




報われない想い。





これは、あんまりだ。





笑えない。






こんなのコメディじゃない。