「どうして?」 俺はナツキに問い掛ける。 ナツキはわずかに目を伏せた。 「物が残ると辛いでしょ? 忘れられなくなっちゃうじゃない」 俺はすぐにはその意味を理解できなかった。 ナツキはかすかに切なそうな顔をする。 「……もうすぐ居なくなるから?」 その言葉にこくりと頷くナツキ。 「あたしにあなたのカケラは残さない。あなたにもあたしのカケラは残さない」 伏せていた目をしっかりと俺に寄越し、揺るがない声でそう言った。 俺は手元に返されたネックレスを見つめた。