その日観た映画はありきたりなラブストーリーだった。 浅野さんと来ていたら、どんな気持ちで観ていただろうか。 そんなことを思った自分を笑う。 隣に居るナツキをこっそりと盗み見る。 普段強気な瞳が食い入るようにスクリーンを見つめている。 それを見て俺の頬が緩む。 彼女のことはもう良い。 さっきだって本当は惨めになる所だったけど、平静でいられた。 ナツキが居てくれたから。 浅野さんのことは確かに好きだったし、憧れていたけど。 ナツキが現れたから、落ち込む間もなかった。