玄関を開けると光がこぼれ、いつもの冷たい空気じゃなくて暖かい空気が流れ出した。 それがなんだか、俺を少し嬉しくさせた。 ナツキ、まだ居たんだ。 家に上がるとキッチンでナツキが何やら作業をしている。 「あ、お帰り、貴弘」 「あぁ、ただいま」 相変わらず当たり前みたいな顔をして、俺に声をかけるナツキ。 「まだ居たんだね」 思わずポロっと出た言葉に、ナツキは眉を寄せる。 「そりゃ居るわよ。何?お金盗んで逃げるとでも思った?」 俺は内心ギクリとしたけど、いや、と平静を装った。