『なんで、笑っているかって? んなことも、わかんねぇのかよ』
目の前で声がした。
誰もいないはずの、テーブルの向こう側に、いるはずのない男の姿があった。
鏡の中で、よく見た姿。
自分だった。
当たり前のように、そこに座って、話しかけてくる。
『【 脳死ババ抜き 】ね。
このゲームは、よくできている
この遊戯は、
いままでの勝負とは違う。
わかってんだろ?
このゲームは、
運を比べ合うのでもねぇ、
技を競い合うのでもねぇ、
能力を測り合うのでもねぇ、
記憶力を絞り合うのでもねぇ、
思考力を絡ませ合うのでもねぇ、
心理の裏を取り合うのでもねぇ、
全身全霊で騙し合うのでもねぇ、
ただ、自分の中の善悪の秤に委ねられる。



