「じゃあ、お先にどうぞ」
もう、反論する気力もない。
機械的に、カードを出す。
納得した。
十三階段を上る死刑囚の気持ちを。
諦観した。
ボタンを押すとエレベーターがくるように、
カードを出すと死ぬ。
ただ、それだけ。
それだけのこと。
エレベーターの到着に感動がないように、
この死別にも、感慨はない。
うつろ。
そう、虚ろだ。
空っぽなのだ。
何もない深淵に、ただ飲み込まれていく。
ゆっくりと、確実に、
場にカードが並べられて行くにしたがって、
死へのカウントダウンは、秒針と同じで
ひとつずつ、着実に、
抗うことのできない穏やかな大河の流れのように、一定のスピードで
滞りなく、予定調和に、
ひたすらに進んでいく。
いたずらに進み続けていく。
真っ暗だ。
真っ黒な、気分だ。
なんの感情もない。
恐怖も
憎悪も
苦渋も 焦燥も
剣呑も 逃避も
後悔も 辛酸も 絶望も
拒絶も 殺意も
躊躇も 渇望も
倦怠も
戦慄も
すべて黒く塗り潰さ⬛️ていく。



