そう、忘れかけていた。

この人は家出の常習犯だと言われていたことを。



「……あのさ、普通抵抗ない?」



俺が……いや、俺とネコさんが男だということを、この女は本当にわかっているのだろうか。



「え、別に?だって家出したら行くとこ探さなきゃじゃない?」



そう言って悪気なさそうにニコリと笑うけれど、それじゃいつか誰かに襲われるぞと俺はうなだれる。



「確かに夜中に外うろつくよりはマシだけど……」

「今はネコさん家よりウサギさん家の方が安全」



確かに一度己に負けたと言っていたネコさんよりは俺の方がマシだと思うだろうけれど。

ぶっちゃけどちらも安全じゃないような……いや、最善の努力はするけれど。



「しかも私……」



急に黙り込んで……どうした?

少し顔に影を落として、寂しそうに笑う。



「女友達いないもの」



そう、それがQとして過ごすということ。

対等じゃいられないから友達はできない。

だからこそ、俺のような存在が彼女の支えになる。